オーダースーツブランドHabitus始動。時代の過渡期に、装いの意味を再解釈する。
- 2月1日
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更新日:2月19日
身に刻まれた「Habitus(習慣)」としての装い
ブランド名に掲げた「Habitus(ハビトゥス)」とは、社会学者ピエール・ブルデューが提唱した、人の「習慣」を指す概念です。
あなたが育ってきた環境、受けた教育、社会的なバックボーン。それらが無意識のうちに身体に刻み込まれ、日々の振る舞いや言動として現れる。それこそが、その人そのものを形作る「習慣」Habitusです。
私たちは今、AIの爆発的な発展、パンデミックによる生活様式の断絶、そして働き方の多様化といった、激しい時代の過渡期の中にいます。
ジェンダーレスやボーダーレスといった「ダイバーシティ(多様性)」が叫ばれる世の中は、一見すると自由で寛容です。しかしその「自由」という言葉の裏で、私たちは何を着るべきか、どう振る舞うべきかという拠り所を失い、アイデンティティの輪郭が曖昧になる不安を抱えてはいないでしょうか。
「背骨」を失った時代の、静かなる危機感
あらゆる境界が曖昧になった現代だからこそ、「何を着るか」という選択は、自らの生きる姿勢そのものであるはずです。衣服は自分自身への「問い」であり、時に、社会への「回答」でもある。装いへの無頓着が「自由」にすり替わり、街の景色を均一化させてしまった現代において、私はスーツが持つ「正統性」をもう一度信じてみたい。
装いには、最低限のルールとしての品格が必要です。それは他者への敬意であると同時に、自分を律するための「背骨」となるものです。心理学の世界には「エンクローズド・コグニッション(内包された認知)」という言葉があります。それは、纏う衣服の象徴的な意味が、着る人の心理プロセスや行動に直接的な影響を及ぼすという考え方です。つまり、凛とした一着を纏うことは、単なる外見の整えではなく、内なる精神の在り方を再構築することに他なりません。
歴史が証明する、スーツと時代の共鳴
スーツには100年を超える歴史があり、秩序や規律の記号として君臨してきました。
しかし、その思想は決して不変ではありませんでした。
1940年代、第二次世界大戦下のイギリスでは「ユーティリティ・スキーム(CC41)」と呼ばれる物資統制により、ポケットの数や折り返しの幅までが厳格に制限されていました。その抑圧への反動として戦後に現れた、布地を贅沢に使った「ボールドルック」は、力強い肩のラインとゆとりあるシルエットで、傷ついた自分たちを鼓舞し、威厳を取り戻そうとする人々の意志の表れでした。
また1960年代、伝統的な階級社会への反逆として、ロンドンの若者たちが生み出した「モッズ(Mod)」という文化。彼らが選んだ極めて細身のスリムスーツは、労働者階級の若者がエリートの記号をハックし、新しい時代のエネルギーを爆発させた象徴でした。
スーツは常に、その時々の人々の「祈り」や「叫び」を投影しながら変化を続けてきたのです。Habitusが目指すのは、単なる懐古主義でも、ただの無秩序でもありません。伝統という重厚な土台の上に、現代の空気感と、あなたの中に流れる「固有の文脈」をどう重ねていくか。
私たちは、皆様と一緒に新たなスーツの文化史を編み直していきたいと考えています。
あなたの深い場所へ、共に潜り込む
現代のトレンドを知ることは確かに大切です。しかし、それが先行しすぎてしまった着こなしには、その人自身の美学が欠けてしまいます。
私がHabitusを通じて行いたいのは、流行の提供ではなく、あなたの深い場所に潜んでいる「パーソナルな美学」を掘り起こすことです。
あなたがどんな場所で、誰と出会い、どんな自分でありたいのか。そこまで深く潜り込んでお話を伺うのは、お仕立てする一着が、あなたの美しき「習慣」となってほしいからです。
誰かの真似ではない、その人の生き方が装いに滲み出ている。そんな人々が街に溢れていたら、世界はもっとワクワクするものになる。私はHabitusのディレクターとして、1人のフィッターとして、その「文脈」を共に掘り出すパートナーでありたいのです。
消費の在り方を変え、装いの輪郭を整える-オーダースーツという選択-
そしてこの「一着を深く、長く愛する」という行為は、大量生産・大量廃棄が繰り返される現代の消費社会に対する、私なりの静かな抵抗でもあります。
受注生産というオーダーの仕組みを通じて、ビジネス、祝祭、あるいは日常のあらゆる文脈を乗り越えて長く着続けられるものをお届けしたい。
一着のスーツが人生の様々なシーンに寄り添い続けることができれば、それは必然的に無駄な消費を抑えることにも繋がります。
「いいものを一着持ち、それを自分の味方にする」 これこそが、資本主義の波の中で私たちが取り戻すべき、最もエシカルで知的な消費のあり方だと信じています。
Habitus TAILORINGの第一歩として、私は、どのような文脈に立たされてもその人を凛と支える一着を提案します。
自らの『Habitus(習慣)』を静かに慈しみ、その形を整えようとするすべての人へ。
着るものが変われば、意識が変わり、振る舞いが変わります。
加速しすぎる世界の中で一度立ち止まり、あなた自身の装いの文脈を、共に編み直してみませんか。お会いできる日を、心より楽しみにしております。


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